酒と、幸福。(篆刻:福)

福 まだ20代後半、マクドナルドやペプシのCMをやっていた頃、黒澤組の助監督に 演出を頼んだことがある。その彼が「あなたに酒が飲めたら、演出をさせて 見たいんだが」と言った。酒が飲めないから、残念ながら人情の深いところが 分からない、という意味らしい。30年以上たって、人並みに飲めるようになった いまは、別に酒が飲めなくても演出はできるし、酒の広告だってできると思う。 11月1日は日本酒造組合が決めた「本格(天然原料の乙類)焼酎・泡盛の日」。 その広告を2003年から3年続けてやらせてもらったが、2004年頃焼酎ブームが ピークになって、あえて広告を打つまでもないと、終わりになった。そのブームも 07年度にはかげり(ブーム定着との見方も)が見え、鹿児島の出荷量は6年ぶりに 前年を下回った。そこに、この事故米騒ぎ。芋焼酎ファンとしても、他人事ではない。 で、篆刻は「福」。畐はお腹のふくらんだ酒樽で、神に酒を供えて福を求めること。 音が同じなので蝠(こうもり)まで吉祥になる。富も、畐に充足する意味があるので、 富む、豊かとなったが、白川先生はあえて論語の「不義にして富みかつ貴きは、 我において浮雲の如し」を挙げている。「事故米を不正に転売して、金と名誉を 得ても、そんなものは雲のようにはかないものだ」と、あのこわい顔が目に浮かぶ。
ページ上部へ