疲れも、過ぎれば。(篆刻:過)

過 疲れるとヘルペスになる、という友人がいる。彼にとって、ヘルペスは疲労の バロメーターにもなっている。このヘルペスウイルスの一種であるHHV-6は、 赤ちゃんのすべてが感染する。その後一生涯、脳などに潜伏し続けるのだが、 仕事などのストレスで再活性化(増殖)して、唾液に放出される。ウイルスが 宿り主の危険を察知して、生き残りのため元気な宿主へ感染しようとする。 まるで、危険が迫った船から逃げ出すネズミのようだが。このHHV-6が脳内で 異常に増殖すると、中枢神経機能に影響を与えて、慢性疲労症候群の人には うつ症状をもたらすという。”KAROSHI”と、そのまま学名にもなっている過労死は、 疲労を本人が自覚できないまま死に至ってしまう。唾液中のHHV-6を調べれば、 疲労の度合いを把握でき、過労死の予防にもなる。疲労の研究は、進んでいる。 疲労の原因物質は長い間乳酸とされたが、乳酸は筋肉の働きを良くする物質で、 むしろ疲労を軽減するために筋肉中に増えることが数年前、分った。さらに、 つい最近、ヘルペスウイルスに関係するたんぱく質FFこそが、疲労原因物質と 特定された。篆刻は、疲れて目が回ったような「過」。咼は、残骨と祝祷の器・さいで、 死霊に祈って、人に禍を与えること。何事も過ぎたるは、禍(災い)なのだ。
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