日本の、言葉。(篆刻:言)

言 眠いのを我慢してオバマ大統領の就任演説を聞いた。同時通訳が女性で 聞きにくかったが、最後まで聞いてから寝た。朝青龍は早朝まで見ていたそうで、 屋根工事の社長もパレードまで見たらしい。全文をネットと新聞で読んだ。 27歳のスピーチライターが書いたようだが、もう”CHANGE”や”CAN”に頼らず、 未来に向かって、いま何をすべきかを語った。その言葉は、生きていた。 一方、日本では。「未曾有」の読み違いなどはご愛嬌の枕。国の根幹に関わる 消費税増税が2011年の「実施」か、「準備」かと、言葉をこねくり回したあげく、 結局どうにでも解釈できる玉虫色の言葉に落ち着いた。給付金にしても、 「言葉がぶれる」との批判が気になって、自縄自縛、引っ込みがつかない。 近頃では、「私は、最初からそう言っている」が決まり文句になってしまった。 コピーライターの大先輩・黒須田伸次郎先生から「言葉が実態を牽引する」と お聞きしたが。いまの日本には、未来の日本はおろか、今日明日の日本を 正すべき言葉すらない。これほど言葉が空疎になった時代は無いのではないか。 篆刻は、「言」。神への誓いの言葉を入れた器「さい」と、入墨の刑に使う針「辛」。 言葉は違約したら罰を受ける覚悟において発する、神聖なものであったのだが。
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