手帳を見たら、もう13年も前。大柳生の友人の家が神社建替えの役にあたった。
広告をやっているなら吉本か松竹芸能にコネがないかと、祭りの余興の相談を
受けた。予算を聞けば、そこそこの金額。遊び仲間に話をしたら、我々で芝居を
しようじゃないか、ということになった。古流の居合の高段者のIが座頭市で、
ちょっと剣道をやっていた私が斬られ役の浪人。やくざの親分やチンピラもすぐ
決まった。さあ、それから毎週毎週、土・日の練習を2ヶ月以上も続けたのだが。
素人芝居に問題はないが、やはりプロも欲しい、という声が出た。大阪の飲み屋で
誰か知らないかと聞いて紹介されたのが、月亭八方さんの弟子の遊方さんだった。
電話したら快く引き受けてくれて、さあ、その当日。午前中、先輩の高座のお囃子を
済ませて、太鼓を積んだまま車で来てくれたのだが。急いで飛ばしたら、阪奈道路で
スピード違反。ただでさえ少ないギャラが、罰金で消えてしまったという、トホホな話。
以来、申し訳ないとずっと気にかかっていたのだが。「家の光」という雑誌で、
「落語家生活20周年、《カジュアルラクゴ》で頑張っている」という3年前の記事に
出会った。写真もあの時とうって変わって、立派な落語家の風貌になっていた。
遊方さん、あの時はごめんなさい。「遊方」の篆刻を送りますので、笑って許して。
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笑って、許して。(篆刻:遊方)
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