宮台真司の『日本の難点』(幻冬社新書)が売れているようだから、読んでみた。
「最先端の人文知の成果を総動員して、生きていくのに必要な評価の物差しを
指し示すべく、現状→背景→処方箋・・・で完全解説」とあるから、どれどれという
気になったのだが。新書でそんなこと出来る訳ない、という当然の結果だった。
緻密で博学(らしい)部分と、極端に感情的な論調、個人的経験が入れ替わり
立ちかわりで出現するから、えらく読みにくい。それは置くとして、どうしても
納得できないことを一点に絞れば、彼の持論が「日本は重武装×対米中立を
目指せ」だということ。重武装とは対地攻撃能力を中核とする反撃能力のことで、
「反撃できると相手に思わせることによって、相手の攻撃を思いとどまらせる
能力」だというのだが。思わせる、思いとどまらせる、と思いに期待をかける
甘さは、援助交際評論家の宿命か。米、ロ、中の重武装国家が北朝鮮の
核武装を制止できないこと、世界最大の重武装国家アメリカが9・11テロを
抑止できなかったことに言及せずに、何の完全解説かとあきれてしまうのだ。
篆書は「難」。白川静説では火矢で鳥を驚かす呪的行為らしいが、日本の難点を
完全解説という幻冬社得意の人を驚かす商法に乗った私にこそ難があった。
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『日本の難点』の、難点。(篆刻:難)
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