日経新聞の「文化往来」によれば、能登演劇堂での仲代達矢主演の無名塾公演
「マクベス」は、自然と一体になった演出で裏山の森が動く。バックの大扉が開き、
地元高校の演劇部やボランティアが木を持って舞台に前進してくるのだという。
小学校6年の学芸会で。担任の先生が私に、芝居を選んで演出せよ、と言った。
図書館で小学生用の脚本から選んだのは「杜子春(とししゅん)」。杜子春という
若者が手持ちのお金の多寡で友人が増えたり減ったりするので、人間に愛想を
尽かして、仙人に術を教えてもらうという話。場所は、洛陽門前の人ごみの中で。
杜子春が、梨の種を見るみるうちに芽を出させ、木にして実を生らせるシーン。
図書館の横に樫の木があったので、枝をいただいた。その枝を店の台に隠して、
驚いて観衆が覗き込む時に枝を出し、驚いてのけぞる時に見えるようにした。
それを2、3度やって、最後は実をつけた枝にすり替えた。こんなことにクラスの
皆がよくも付き合ってくれたと思うし、子どもながら上出来の工夫だとは思うが。
だからといって、この演出で講堂が割れんばかりの拍手に包まれた記憶もない。
篆刻は、75ミリ角の「山」「川」「草」「木」4顆セットのひとつ。仲代達矢は76歳、
私は63歳。山は動かせないが、石に想いを刻んで天に飛ばそうと、本気で思う。
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山、動く。(篆刻:山)
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