猫の肉球と爪で「点」という字を書いてみた。猫のテンテンは、白い体に点々と
濃い灰色があるからだが、きょうの夕方、私とカミサンが見守るなかで亡くなった。
15年ほど前、カミサンが犬の散歩で小さな紙袋を拾った。中に生まれたばかり、
目も開かない猫がいた。大きさは百円ライターほど。獣医にミルクをもらってきて
スポイトで飲ませた。目が開いた時、ミルクをやっていたのが私だったから、私を
親だと思っていた。数年前まで、私の耳を吸ったから、耳たぶがカサカサになった。
テンテンは、自分が猫だと思っていない、自分は特別だと思っているようで、他の
猫に馴染まなかったし、お客さんにもなつかなかった。毛が印泥に入るので
仕事場に猫は入れなかったが、テンテンは許した。奈良から逗子へ越した時も、
テンテンと犬のトノは連れていった。狭いマンション暮らしがストレスになったようで、
毛を歯でむしった。リードをつけて公園を散歩させたが、ダメだった。奈良に帰っても
直らず、舐めて肌が赤く見えるほどになった。老衰で体力が落ちてからは、それも
出来ず、死んだ時は元のきれいな毛並みでいたのが、せめてもの救いだった。
仏壇の前に置いて、カミサンと般若心経をあげ始めたが、ふたりとも出だしで
息を詰まらせてしまった。明日の朝、仕事場の窓から見える場所に埋める。
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テンテン、という猫。(篆刻:点)
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