木を、伐ること。(篆刻:伐)

伐 去年、北隣の家の裏山で樫を伐りはじめた。どこの家にもチェーンソーはあるから、 多少の太さなら自分で伐れるのだが、裏山で伸び放題になったのは、手に負えない。 専門の業者に頼んで手間賃なしで伐ってもらい、その樫は業者が持ち帰るのだが。 樫なら何でも、という訳にはいかない。中の白い白樫でなければ、商品価値が無い。 いまでも、白樫はクワなどの柄、カンナの台、クサビなどになる有用材なのだという。 隣の空き家にも樫が生い茂って、下の市道にまでせり出している。常緑で落葉は 少ないが、秋にドングリが落ちて、それを車が粉引きする。それが腐葉土になって、 雑草が生える。もちろん、見通しが悪く、暗い。三重県の持ち主に連絡して、業者に 伐ってもらった。離れの屋根の上に大きな空が見える。次は我が家のイチョウを 根元から伐ってもらった。仕事場の窓から、西の空が大きく見えるようになった。 草刈機を持つと、ふだん愛らしく思っていた草まで刈る。チェーンソーを持つと、 他の木まで伐りたくなる。武器が手にあると人格が変るのは事実に違いない。 篆書の「伐」は、人と武器である戈(ほこ)だが、戈が人の上部にまで入っている。 伐は人を斬ること、斬首であった。木を伐っておいて言うのもおこがましいが、 木を伐ることは自然を殺すこと。それが人を殺すことにならなければいいけれど。 ※画像はフォトショップで色を塗っているときに、出たムラが面白かったので。
ページ上部へ