「もう5年。まだ5年。」 あの大震災から5年後、NHKの特番用のポスターに
書いた、私のコピー。人々の気持ちは、5年の時を整理しきれずに揺れていた。
15年目のきょうにしても、それは「もう」だし、「まだ」なのではないだろうか。
昨日のNHK「追跡!AtoZ」は、被災者の心の浮沈を復興曲線にして分析する
研究を紹介していた。公営住宅に優先的に入居できた高齢者より、自力で
住居を再建せざるを得なかった働き盛りの多くが二番底を経験し、いまだに
下降している人がいる。しかし、あることを機に一転、上昇をはじめた人もいる。
身体に障害を受けて、笑えない日々が続いたが、語りあえる仲間を見つけた。
会話の途絶えていた夫婦が話はじめた。震災の体験を伝える語り部になった。
手記を書き出した。そんな人たちの曲線は、上に伸びていく。その共通項は、
言葉なのだ。言葉が人を救う、という事実。しかし、その言葉は、単純ではない。
「もう15年」というには、あまりに遅い。「まだ15年」と思うには、かなり早い。
切ったら血がでる本当の言葉は、その間にある。そんな言葉だけが、伝わる。
篆刻は、「間」。門の中に肉を置いて祀(まつ)り、安静を祈願すること。本当に
人の心の肉となり骨となるような真の言葉は、我と他、彼と此、その間にある。
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間(あいだ)の、言葉。(篆刻:間)
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