
「太陽がいっぱい」でアランドロンが他人のサインを壁に投射して練習する
場面を覚えている方は多いだろう。契約などに実印が必要な日本では、
サインするのはカードを使うときぐらいだが。閣議文書の大臣の署名には
花押(かおう)というサインの一種がいまだに慣行として残っているらしい。
先日、その花押をつくって欲しいという依頼が東京から来た。ネット上でも
「花押つくります」というのがずい分あるというので見れば、○○流花押などと
称して、かなりの料金で驚いた。私も、花押は篆刻・印章の親類だから興味が
あったし、専門の本も手元にあったから、新しいテーマとお引き受けした。
実は花押のつくり方に決まりがある訳ではなく、漢字の草書体を基本として
独自の構成に工夫を凝らしたもので、時代によって流行があるに過ぎない。
ある大臣のそれはアルファベットにピリオドまでをつけ、筆で縦書きしている。
出来上がった花押は実印に準ずるものだからお見せできないから、ここでは
B案をご覧いただくが、名前の漢字の中から「百(たくさん)」「人」「心」を抽出、
構成した。会社のトップにある方だからだが、では多くの人の心をどうするか。
それはその方が考えるべきこと。形は決めたが、中味はその方がつくるのだ。