生ぜず、滅せず。(篆刻:不生不滅)

不生不滅
「不生不滅」は、ご存知の方も多いだろう。般若心経の一節。 「是諸法空相」 真理は空である、に続く、生ずることも、無くなることもない。 ところが、ちょうどこれを彫っている頃、私の父が滅した。 そのことによって、私のなかに、ひとつの野望が生まれた。 何のことはない、般若心経の意味なんて、ちっとも分かっとらんのです。 篆刻をされる方には覚えがあるでしょう。やたらに周りの誰かをつかまえて、 「ねえ、あなたの名前、彫ってみようか」「ねえ、ねえ、彫らせて」というやつ。 それをひとしきりやると、次は何かのテーマが欲しくなる。 それが、私の場合は般若心経ではあったのですが、 あの260文字を全部彫るなんて大それたことは微塵も考えてもいなかった。 「不垢不浄」「度一切苦厄」とかの文節をつまみ食い。画数が少なくて、 徐先生の作品に似た文字がある、とかで選んでは、彫っていただけだもの。 それが、全部彫ったら親父の供養になるかも、と思いついてからが大変。 見たこともない字が多いでしょう。しかも、次からつぎへ、「無」の行列。 「とくあーのーくたーらさんみゃくさんぼーだい」なんて、どうすりゃいいのよぉ。
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