東京の個展は、おかげさまでご好評をいただいたのだが、まだ頭の整理が
ついていないので、その話は近々。最終日、搬出を終えて東京から帰ってきた。
近鉄奈良のエスカレーターを上がったら、目の前に『東大寺門前 夢風ひろば』の
電照看板があった。まるで私を出迎えてくれたかのように。淡い緑のイラストに
くっきりと明朝体の文字があって、右下にこの楽篆堂の「夢風」の篆刻がある。
2年前のオープン時は『ふれあい回廊 夢しるべ風しるべ』。『美人の日本語』などで
ファンも多い山下景子さんの命名なのだが、いかんせん長すぎる。書は東大寺の
お坊さんが書いたのだが、修学旅行の中学生が読めないという。そこで、夢と風を
残して改名。明朝体で読みやすくしたので、それに添える篆刻をとのご指名だった。
要するにワンポイントのアクセントなので、読めなくても構わない。で、白川先生の
『字統』と相談のうえ、字源に忠実に、夢は夢占いをする巫女が寝台に寝る姿に、
風は鳳(おおとり)が羽ばたく姿にした。順番では、夢が上、風が下だが、あえて
上下を逆転させた。山下さんが込めた想いは無くなってしまったが、篆刻によって
新たなストーリーが生まれた、とよろこんでいただいた。奈良は遷都1300年祭の
まっただ中。奈良に住む私にも新しい夢がふくらみ、爽やかな風が吹き始めた。
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夢と、風。(篆刻:夢風)
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