三蔵法師の、声。(写真:薬師寺・花展ポスター)

2016728182741.jpg カミサンが主宰する「野の花と遊ぶ 花の会」が、薬師寺玄奘三蔵院で花展を させていただいた。4月6日から13日まで、雨あり風ありの長丁場だったが、 無事に終わることができたのは三蔵法師さまが守ってくださったからだと思う。 無事ではあったが、2日目に椿事が出来した。朝一番で行ってくれた当番さんの 電話で。「昨日、お客さまから看板の展の字が違う。薬師寺ともあろうところで、 間違った字を掲示するとは何たることか」と注意されたというのだ。書いたのは 私。篆刻の個展前のあわただしい時に書いたのだが、ぶっつけ本番で、2枚を 実に気持ちよく書けた。「花展」と書いた時は、少し字がうまくなったようにも感じた。 さて、書き直すかどうか。結局は7日間そのままにしておいた。それを指摘 する方も、その後はいなかった。まじまじと看板を見つめる方に、字の間違いが ありますがお分かりになりますか、と聞いたけれど分からなかったのだし。 「字なんてそんなものです。一点、一画をおろそかにせず書くなんて、小学生の テストだけです。文字ばかりでなく、言葉だってそんなものです。文字も言葉も、 都合がいいから使っているだけで、それ自体は真実でも本質でもないのです。」  1347巻ものお経を漢字に翻訳した三蔵法師さまの、そんな声が聞こえた。
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