洗う、熊。(篆刻:洗)

洗 いまの銀座はよく知らないが、私が20代の頃は、まだお洒落な店が多かった。 洋品店のウインドウに、洗い熊の縞のシッポが付いた、あのデビー・クロケットの 帽子を見つけて衝動買いした。2万5千円くらいの記憶があるから、若気の至り。 逗子にいた7、8年前、鎌倉でアライグマが野生化して周辺に被害が出ていると 聞いた。「まあ、都会の人は後先も考えずに、何でもペットにするものだ」と他人事 だったが、それが奈良の山の中まで追いかけてくるとは思わなかった。雑食で 繁殖力も旺盛だから、タヌキが駆逐されたとも聞く。被害は農作物にとどまらず、 人家の屋根裏に住み着いて、子を産む、糞をする。浄瑠璃寺の国宝三重の塔も 傷つけられた。視力が弱く水に手を入れて獲物をあさるので洗い熊といわれるが、 毒のあるイモリ、カエルなどは洗うこともするらしい。現に、我が家の猫の餌を 食べに入って来て、目が合ったこともある。アニメの「ラスカル」そのものだった。 笠置に近いSさんから、また檻にかかったと聞いて、カメラを持って見に行った。 まだ子どもで猫のように丸くなっていたが、カメラを近づけると唸って飛びかかる。 檻には市の農林課の札がある。猟友会が取りに来て、川に沈めて殺すらしい。 致し方ないがむごい。せめて帽子にしてやれば、とも思うが温暖化で暑苦しいか。
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