宇野亜喜良さん、のように。(篆刻:亜)

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いつもより早く目が覚めたが、起きて新聞を取りにいった。日経新聞の朝刊小説
『韃靼の馬』が、きょう最終回だから。高樹のぶ子『甘苦上海』に続いての連載で、
辻原登という作家は知らなかったが、日本の対馬、大阪、江戸、朝鮮、モンゴル、
さらに中央アジアへと展開するスケールと、それに緻密に織り込まれた人間の心と
生き方に、毎朝新鮮な刺激を与えられた。そして、宇野亜喜良の挿絵が良かった。

あえて宇野亜喜良さんと呼ばせていただくが、私が大学の頃すでにイラストレーター
としてスターだった。下世話な言い方をすれば、サイケなイラストで一世を風靡した。
改めてWikiで知ったのだが、カルピスの社員で広告・宣伝を担当したそうだから、
業界の先輩で、私が入社しかかった日本デザインセンターのメンバーでもあった。
ときどき週刊誌の挿絵でAquiraxの名を見て、まだ現役、健在なんだと思ったが。

今回は、ただただ圧倒された。男は武士、青年、老人、女は武家の子女から朝鮮人、
ロシア人まで、馬、鳩、そして風景、とにかく毎回何を描いてもすごい。人の表情は
もちろん、風景にまでドラマが描き込まれている。最終回の画には434回の登場
人物のすべての想いがさりげなく込められていた。私のちょうどひと回り上なのだが、
私がクリエイターであり続けるならば、彼は私の道の先の天空にさん然と輝く星だ。

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