やはりこれは珍事だろう。大阪のある方からメールで「楽篆堂の篆刻・般若心経」を
真似て彫ったのだが、それを友人が欲しいと言っている。額装などの実費程度で
譲りたいが著作権上問題はないのか」という問合せだった。添付の画像を見れば、
まぁ見事にそっくりで、明らかに変えたのは「無」のひと文字くらい。篆刻の経験は
ほとんど無いが、印刀を自作し、腱鞘炎もどきになりながら1年がかりというから
脱帽もの。「ご自由に」と返事したが、模倣とオリジナルという問題提起ではある。
習字の練習法に大家や先生の書を真似る臨書がある。篆刻では「摸刻」という。
そもそも私の般若心経自体、多くの字体を徐三庚からいただいている。ただし、
それを分節ごとの印として文字を構成配置する布字の部分では大いに汗をかいて
いる。よってこの段階で、この般若心経は私の作品となるのだが、発表する時は
徐三庚を真似たと断りを入れている。今回は布字をせず、すべてが摸刻なので、
落款の前にせめて「摸 楽篆堂・般若心経」と書くのが作法ではと注文をつけた。
折しも、いま日経新聞の文化欄では『模倣からの創造』というコラムを連載中だ。
私もこの般若心経完成が自分なりの篆刻を探す起点になった。そろそろ楽篆堂
オリジナルの般若心経に取りかかるべきでは、と後ろを押されたような気がする。
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般若心経の、珍事。(篆刻:般若心経)
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