矢野正善さんは、入江泰吉氏の弟子で、独立して関西の料理写真の草分けとなった
カメラマンだが、料理の撮影に使う草花を栽培するうちカエデに魅了された。とても
身近なのに、詳しい観察がされず資料も乏しかった、それなら自分がと収集研究を
はじめて、いまでは日本屈指のカエデ収集家だ。奈良市内に借りた土地で千本余を
育成したが、奈良県宇陀市菟田野に招かれ、旧宇陀小学校跡地で「宇陀カエデの郷」
づくりに奮闘されている。先日、縁あってお訪ねすることができたのは幸いだった。
すっかり公園風に整った敷地にカエデを植込んだのは今年3月。どこに何を植えた
かの確認もまだできないほど忙しいのに、カエデとモミジの違いも分からぬ我々に
長時間にわたって親切にご説明いただいた。地植えとビニールハウスで1200種、
3000株のカエデ・ワールド。カエデと言っても、どれだけ多彩かは矢野さんのHP
《カエデ モミジ 写真植物園》に満載されているが。「モミジは秋の紅葉」と思われ
ているけれど、もっと美しいのは春だと何回もおっしゃる。篆刻は、昔の注文印の
「楓」だが、中国のフウという木の文字が誤ったまま使われてしまったそうで、正しい
漢字は「槭(シュク・木へんに戚)」。喜寿を迎えた矢野さんは玩槭爺を名乗られる。
タイムドメインの由井さんも70代。まだまだ現役、そのパワーには圧倒されるばかり。
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カエデと、生きる。(篆刻:楓)
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