久しぶりに「情熱大陸」を見た。京都・花背の里、摘草料理「美山荘」の四代目当主
中東久人氏。美山荘といえば、いま奈良・宇陀で「かえでの里」づくりに奮闘される
矢野正善さんが料理写真の草分けとして、ここの料理を撮っていたのではないか。
撮影に山野草が必要で、それがカエデの世界に入るきっかけになったと聞いたが。
名門の四代目はそれなりに苦労したようだが、それを顔に出さず、いつもにこやか。
それでも先代の友人で、後見人のような南禅寺「瓢亭」の高橋英一氏が訪れた時は
緊張しながら秘蔵の蛸唐草の古伊万里を選んだ。鯉料理だと思うが、料理人が嫌う
鯉のウロコを揚げてつぶした粉をかけて出した。高橋氏はその料理にはコメントせず、
蛸唐草の器の中にまた小さな器を置いたことを「音がするし、器を傷める」と注意した。
さらに続けたのは「(冒険するのは良いが)片足で出なさい。両足で出てはいけない」。
ウーンとうなりました。これが、京都なんだと。伝統を守りながら、絶えず革新する。
京都がいまだに京都たるを誇ることの真の意味を、やさしくだが深く言い当てている。
さて、私、楽篆堂。四千年の歴史がある漢字と篆刻で、多くが懐古・保守に流れる
現状に逆らうが。両足で飛び出れば篆刻でない何かになってしまう。この「一期一会」
ならぬ「一期一笑」。高橋英一氏とテレビを通じての「一期一笑」だったと思うのだが。
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出すのは、片足。(篆刻:一期一笑)
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