出すのは、片足。(篆刻:一期一笑)

2016728173559.gif 久しぶりに「情熱大陸」を見た。京都・花背の里、摘草料理「美山荘」の四代目当主 中東久人氏。美山荘といえば、いま奈良・宇陀で「かえでの里」づくりに奮闘される 矢野正善さんが料理写真の草分けとして、ここの料理を撮っていたのではないか。 撮影に山野草が必要で、それがカエデの世界に入るきっかけになったと聞いたが。 名門の四代目はそれなりに苦労したようだが、それを顔に出さず、いつもにこやか。 それでも先代の友人で、後見人のような南禅寺「瓢亭」の高橋英一氏が訪れた時は 緊張しながら秘蔵の蛸唐草の古伊万里を選んだ。鯉料理だと思うが、料理人が嫌う 鯉のウロコを揚げてつぶした粉をかけて出した。高橋氏はその料理にはコメントせず、 蛸唐草の器の中にまた小さな器を置いたことを「音がするし、器を傷める」と注意した。 さらに続けたのは「(冒険するのは良いが)片足で出なさい。両足で出てはいけない」。 ウーンとうなりました。これが、京都なんだと。伝統を守りながら、絶えず革新する。 京都がいまだに京都たるを誇ることの真の意味を、やさしくだが深く言い当てている。 さて、私、楽篆堂。四千年の歴史がある漢字と篆刻で、多くが懐古・保守に流れる 現状に逆らうが。両足で飛び出れば篆刻でない何かになってしまう。この「一期一会」 ならぬ「一期一笑」。高橋英一氏とテレビを通じての「一期一笑」だったと思うのだが。
ページ上部へ