愛と平和の後は、死について。『人は死なない』(矢作直樹著・バジリコ)は新聞の
広告で何回か見て気になっていたのだが、とうとう取寄せた。矢作さんは東大の
医学部救急医学の教授で、附属病院の救急部・集中医療部部長。救急の現場で
生と死を通して生命の神秘に触れ、医学の常識で説明のつかないことを経験する。
生命の有り様、宇宙の原理、森羅万象の完璧さは科学的論理や善悪の倫理を
超えた「摂理」の業としか思えない。その摂理の存在を感受できるのは人間だけ。
風呂の中で孤独死した母と、ある人を介して会話した経験もある。肉親を亡くしても
霊魂や死後の世界を認めない自分と、亡くなった人の霊魂が自分を見守ってくれて
いるのではないかと直感的に感じている自分がいることを知る。科学の領域と次元の
異なる霊的体験を科学的に証明する必要はないと考える。霊的現象それ自体には
意味がなく、その見聞や体験からの啓示、導かれる理念、真理こそが本質なのだと。
人の一生には寿命の長短、背負う荷物の軽重がある。しかし我々の人生の旅は
死後も続く、摂理の意志は悠久の生の中で折り合いがつくよう働いていると考えれば
現世での苦しみや悲しみが多少とも癒されるのではないかと考える。子どもを亡くし
多少の霊的な体験をした私も「人は死なない」と考えることができる。さて、あなたは。