様って、何様?(篆刻:樣)

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今朝、新聞を読みながらテレビをちらちら見ていたら、「様」という漢字は相手によって
使い分けなければいけないという話で、目を皿にした。右の羊の下が水は目下に使い、
目上には永であり、同格には次なのだという。「こういうことはどんどん啓蒙しなければ」
というコメントまで加えられた。無学の篆刻作家で勉強嫌いの広告文案家ではあるが、
そんなことは初耳だ。早速、白川静先生に聞いてみなくちゃ、と『字統』を調べたら・・・

「様」の旧字が「樣」で、篆書体も「樣」になっている。国語では敬称の「さま」、ともある。
もちろん『字通』も同じ。『大漢語林』(大修館書店刊)でも、ほぼ同様。だが「次」の字は
どれにもない。そこで学生用の『漢和辞典』(旺文社刊)を見たら、やっとここに「次」が
異体俗字として載っていた。はてさて、こんな使い分けはマナー教室か習字の先生が
言っているのだろうが。篆刻教室の原稿づくりで墨と朱墨を使わせる、物事をわざと
ややこしくして教えることと同類ではないか。今朝の日経には宝島社の「大人のペン
習字帳」や呉竹の「水で何度も書ける文字練習セット」が売れている記事があった。
文字を書く機会が減って、上手に文字が書けない悩みを持つ人が増えたかららしい。

日本の国語政策には多くの誤りがあるし、常用漢字に問題も多いのだが、旧字俗字
まで引っぱり出して訳知り顔で人に誤ったことを教える、そういうあなたは何様ですか? 

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