登る龍、怒る龍。(篆刻:登龍)

登龍
龍には、ずいぶん振り回された。といっても、問題なのは龍ではなく、私なのだが。 アントニオ・ガウディの自動書記(ガウディが乗り移って、彼しか知らないはずの ことを書く)をされたという霊能者M女史。彼女に「七匹の龍が付いています。 もう一匹はあなた。それで八大竜王です」といわれた。生駒の石切神社で 名の知れたHさんにも、同じようなことを言われた。私は、龍なんでしょうか。 私がうつ病で苦しんだことは前にお話したが、厄介なことに、うつの前には躁がある。 そんなとき、この方面の方は、私に龍を感じるらしい。よく働き、よく遊ぶ。能弁になる。 酒を飲む。歌う。踊る、なんていうこともする。初対面の人でも、家に泊まらせる。 言うことが大きくなる。本を書く気になれば、ひと晩で書ける、というような気がする。 そして、買い物が多くなる。ちょうど結婚20年目には、威勢のいい龍がやってきた。 ベンツの280SL。オードリー・ヘップバーンが映画で乗っていた。ハードトップが 少しへこんだパゴタルーフ。惚れぼれするような淡いグリーン。これをカミサンに買って、 やっちゃった。言い値で、頭金を払って、残りはローン。待ち焦がれた納車。さあ初乗り、 とシートベルトを締めようとしたが、オスはあるけど、メスがない。オーバーヒートする。 デフが効かずに、雨の日は走れない。篆刻は「登龍」。登る勢いの龍が、さあ怒った。
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