心を攻めるのが、上である。(篆刻:攻心為上)

攻心為上
怒った龍、って私なんですが、グイグイ力まかせに攻めまくった。購入前後の経過を A3に3枚も細かく書き出す。ファックスで抗議する。内容証明を送りつけて裁判だという。 その頃居合いも少しやっていて、ベンツと関係ないのだが、日本刀の本身を持ったまま 整備工場にも行った。それでも、相手は「こういうクルマは、そんな不具合を直すのが 楽しみなんですよ」と、のらりくらり。暖簾に腕押し。柳に風。一枚も二枚も上手だった。 陸運局に行って、登録書類を見た。私は重量税を払ったのに、業者は古いから無価値と 申請して、ネコババしていることまで分かった。しかし、龍が元気なのは、このあたりまで。 昇る龍が、潜る龍になった。ベンツどころではない。会社にも行けず、寝込んでしまった。 困ったのはカミサンだ。私の友人に同行してもらって、先方の会社で会うことにした。 といって、勝算などがある訳もない。出かける前、ただぼう然と庭に落ちた栗を拾った。 「栗はお好きですか」。開口一番に言われて、相手はア然とした。「・・・ええ、好きです」と 答えた。そこからカミサンは一気にしゃべる。「お父さんからのプレゼントですけど、私は あんな車嫌いです。普通の車でいいんです。お父さんに叱られてもいいから、引き取って ください」。買戻し金額は、ちょうどローン分だった。篆刻は「心を攻めるのを上となす」。 私は彫っただけ。カミサンは無心、捨て身で行った。この場をかりて、正座。「参りました」
ページ上部へ