天につながる、オープンカー。(篆刻:天)

201373171325.gif ガレージでブルーシートをかぶっていたベンツは、引き取られていった。うつ病も治った。 だが数年後。また開放的なオープンカーに乗りたいという煩悩に、キーが入る。 マツダのロードスターの中古車を買った。あのベンツの頭金で、ちょうどこの新車が 買えたというのに・・・。マニュアル、2シーター、ライトウェイト。高速で120キロを超えると、 車体が浮いて怖いが、峠の多いワインディングロードでは、人馬一体そのものだった。 ある春の朝。陽光にうながされて、大阪へオープンで出かけた。阪奈道路を抜けて、 大阪に入った頃から渋滞。真後ろには若い女性ふたり。進んでは止まりを繰り返すうち、 尿意をもよおした。トイレはない。ゴミ袋なんて積んでない。さあ、どうする。あった、 頭の上にテンガロンハット。テキサスで買った皮のゴツイやつ。運転しながらでも、 できるもんなんですね。見るみる満タンになったが、さすが本場もの、一滴も漏れない。 でも、チャポチャポ揺れて、こぼれそう。避難帯に排水口があった。停車。ザバッと捨てた。 篆刻は「天」。人の頭が大きい。ちなみに仲間内で私の名は「天ちゃん」。畏れおおくも 最晩年の昭和天皇に似てる、という。それはさておき、大きな頭の人がなぜ天なんだろう。 白川静先生も、明快にお答えではないが、私はトランス状態の人間では、と愚考する。 まだ寒いのに、テンガロンハットをかぶって、オープンカーに乗っている、というような。
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