『里山資本主義』、感想文。(篆刻:里)

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『里山資本主義』(藻谷浩介・NHK広島取材班)を読んだ。奈良の東部山間で里山に
囲まれているから、里山資本主義がマネー資本主義をくつがえさないまでも、それに
拮抗して成り立つならと読み始めたのだが。オーストリアに取材しての木クズ利用の
大規模な発電・地域暖房とか、CLTという直角に張り合わせた建材での高いビル建築
などは、日本では法律改正や行政の大英断が欠かせない問題で、ひとまず置くとして。

いまも目の前に見える杉やヒノキを植林した山とその持ち主たちについてなら感想は
言える。身近な里山利用法として、近くの山に木の枝数本を毎日拾いに行き、エコ
ストーブなるもので煮炊きする人が紹介されている。材料はオイル缶と煙突、断熱材に
する土壌改良剤などで5,000円以下。作り方は検索ですぐ見つかる。これをプリント
して近所の二人に渡した。ひとりはオール電化なのに「作ってみようか」と言ったが、
いまだ手付かず。もうひとりはヒノキの間伐をして薪を作り、風呂を焚いているけれど
「そんなもん、要らん」で終わった。そういう私も作っていない。なぜか。他人のヒノキの
山でも、枝を拾いに行けばよろこばれるのに。なぜか。エコは理屈です。単に急斜面を
登るのがつらいのです。人間は後戻りできない動物だ、という大きく高い壁が里山資本
主義の前に立ちはだかっています。あまりにも楽観的、それが読後の素直な感想です。

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