生物を、真似る。(篆刻:模)

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夜、居間のガラス戸に張り付いたヤモリに猫が飛びつく。庭に猫が吐いた毛玉がある。
猫つながりの話だが、バイオミメティクスの話でもある。生物=bioと真似る=mimeの
合成語「生物模倣技術」で昆虫や動物の体の微細構造を技術革新に役立てる取組み。

ヤモリは一本の足裏に650万本、1平方センチなら20億本もの細かい毛があるので
ガラスでも接着できる。これを真似たヤモリテープは、もう4年も前に日東電工が開発
済み。猫のザラついた舌はシャープがサイクロン掃除機のゴミ圧縮ブレードに応用した。
シャープはアホウドリ、イヌワシ、トンボの羽根をエアコンに、イルカの表皮や尾びれを
洗濯機に、海を渡り数千キロを旅する蝶のアサギマダラの羽根の仕組みを扇風機に
応用したりと、数々の家電をバイオミメティクスで進化させているパイオニアなのだが。

それでも日本は欧米に大きく後れをとっているそうだ。原因は、生物学と工学の間の
研究者の交流不足、学問の縦割り。以前から「宇宙や月、火星も大事だろうが地球で
まだまだやることがあるはずだ」と、直感的に思っていたけれど。食物連鎖の頂上に
君臨しているはずの人間は、貝が冷たい水中でも殻を成長させているのに、加熱し
なければセラミックスを作れない。魚の群れが体に触れずに素早く泳げるのに、車は
渋滞したり衝突したり。人間は驕りを捨て、人間以外の生物に謙虚に学ばなくっちゃ。

 

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