本当の巧みには、術などない。(篆刻:大巧無巧術)

大巧無巧術
大学では広告研究会だった。勧誘を受ける前に入って、教室より部室の方が多かった。 のんびりしたもので、4年になってやっと就職を考えはじめた。久保田宣伝研究所 (現・宣伝会議)のコピーライター養成講座に通った。その日の講師は、広研の先輩・ 金内一郎さん。友人のTと挨拶して、コーヒーをご馳走になった。数日後、電話を いただく。「T君と、うち(AZ)のコピーライターになりませんか」という、夢のような話。 その時ふたりは、NDCの試験を受けて結果待ち。ソニービルの前で、2時間ほど 話した。NDCには、「AZに行きたいので」とお詫びに行く。帰ると、梶さんという方から 電話があったという。「金内には話をつけるから、こっちに来ないか」という、またまた 夢のような話(数年前、梶さんにこの話をしたら、まったく記憶にないとのこと)。 NDCは大きい会社、AZなら金内さんが直接指導してくださるのが決め手だった。 三菱銀行の広報課分室で、コピーライター修行がはじまった。銀行の支店が次々に 出来た時代。開設準備室に支店長を訪ねて、方針を聞く。マーク、スローガンを決める。 支店長の挨拶状から、チラシ、マッチ、メモまで、いわばミニCIをやらせてもらった。 その頃の金内さんの住宅ローンのコピーは、「一戸建てか、マンションか」。 これコピー?とあっけにとられた。篆刻は「大いなる巧みに、巧みな術など無い」。
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