明るい篆刻。(篆刻:游心)

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遊が「親父の趣味は剣道も篆刻も屋根の下で暗い」と言ったことがあるが。その遊が
大きな空の下、広い鈴鹿サーキットで事故死したのだから、良かったのかどうなのか。
あの日から丸17年が、今日。晴れ男だった遊にふさわしく、今日も日差しが温かい。

剣道は教えていた小学生が3人しかいないのを機に10年ほど前にやめたけれど、
篆刻はもう40年近く続けていて、趣味から本業になった。確かにインドアの仕事では
あるけれど、それが暗いのか明るいのか。先日の三游会で、出野さんという本格的な
篆刻をされる方が、「あなたの篆刻には陽気がある」と言ってくださった。「ありがとう
ございます」と笑顔で答えたが、心の中では躍り上がった。私が目指している篆刻は
まさにそうなのだから。その漢字が生まれたときの物語をまず白川先生の『字統』で
読む。その物語をいま、この時に生かしてみたい。そう考えながら文字を見つめると、
伸びたがる線、曲がりたがる場所が見えてくる。素直にそうしてあげると、その漢字が
よろこんでいるように見える。そんな篆刻は見る人にも伝わるらしい。無理やり座棺に
押し込んだような篆刻には無い、明るさ、楽しさが生まれているはず、だと思うのだが。
「方寸(3センチ四方)の世界に(のびのび)遊ぶ」ことこそが篆刻の醍醐味なのだから。

遊もきっと上から見ながら、それを知っていると思う。「親父、楽しそうにやってるな」と。

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