遊ぶために、生まれた。(篆刻:遊)

遊
もうひとつの命の話をしようと思う。 田中 遊。私が26歳で生まれた長男。外資系代理店にいた頃で、アルファベットに ある漢字のひと文字にした。ちなみに年子の弟は、映。住まいは、横浜の中区竹之丸。 近所には、ハーフの子もいた。ある日、会社で外人の営業Hと喧嘩した。彼の秘書に、 「頭を冷やせ」と冷蔵庫の氷を渡して、家に帰った。案の定、電話がかかってきた。 遊が3歳前後。まだ日本語もまともではないが、電話に出たい盛り。受話器をとったが、 Hがしゃべるのを聞いて、目を白黒。しばらく無言。とっさに「ワンツースリー」と言った。 初めての給食の日に、奈良に引越しさせられて、5年生でまた、山に引越し。犬や猫が 飼える環境より、友達の方が大事と抵抗したが、ここに住むメリットに気づくのに、 さほど時間はかからなかった、と思う。近くの柳生にも月ヶ瀬にも、いい遊び場があった。 ゴルフ場のために山を削ったまま放置された、バイクや四駆の遊び場だ。小学生で ホンダのゴリラに乗った。中学ではモトクロス。奈良の高校ならバイク通学ができると 思ったが、禁止。家の周りでならばと、私はバイクを黙認したが、知られて停学になった。 反省文を書く。それを読んで、私は思った。こいつは、広告に向いているかもしれない、と。 篆刻は「遊」。氏族の旗を風にひるがえしながら、国の外に遊ぶ王子の姿だという。
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