いつまでも、白いタオル。(篆刻:素)

素
遊は、金曜の夜、大丸神戸店のXマスセールの新聞広告の入稿を済ませて帰宅。 そして鈴鹿に向かった。掲載日が告別式。ゲラ刷りをお棺に入れた。年が明けて、 ハイエスト・ハイは、もうひとりでやって行こうと決めて、少ない社員にも辞めてもらった。 ひとりになった大阪堂島の会社。めったにないが、大阪に用があったカミサンがいた。 そこに電話がかかってきた。「去年の大丸の正月広告が、朝日広告賞に入った」と。 「1月1日の、白いタオル。」 ボディ・コピーは「平成11年1月1日、いいことが始まり そうな数字が並んだこの日。そんなうれしさを、あなたなら何で表すでしょうか。」 「たとえば、1年で初めて使うタオル。普段よりちょっと上等な、真っ白な新品にしてみる。 肌をぬぐう。シャキッとする。おまけに「よし!」とか「さあ!」とか感じたら、1本のタオルにも、 元気や勇気や励ましなんかがしっかり詰まっていることに気づくでしょう。」 「どんな時代でも、あるものに気持ちがすっと重なり合った時の、あのうれしさこそが、 人を幸福にするエネルギーなのですね。」 準部門賞だったが、まったく賞などを 意識せず、遊を含むスタッフみんなが気持ちよくつくった広告だったから、うれしかった。 篆刻は「素」。糸を染めるとき、堅く結んだ部分が白く残ること。モノクロなのに、 朝の爽やかな日差しを感じさせる白いタオルを撮ってくれたノブさんも、もういないが。
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