座布団を、どうぞ。(篆刻:仁)

仁
秋篠宮家に男のお子さまが生まれた。まずもって目出度いとして。 名前は「悠仁(ひさひと)」と決まった。マスコミはこぞって「悠」の意味を伝える。 白川静先生の『字統』から、「みそぎを終えて、心の伸びやかになった状態」だと。 「仁」については、儒教で人の最高の徳目とすることから、長く男子の二文字の下に 使うのが慣例として、それ以上字源にまでさかのぼることはないようだ。 以下、『字統』では。孔子も孟子も「仁は人なり」と人に同じとしたが、金文などの仁が 人の下に二を置いた形であることから、二を敷物と解釈する。敷物を人に施すことが 仁の本来の意味で、そこから広がって、親和・慈愛となり、さらに最高の徳にまで 高められた、とのこと。漢字の御本家中国が文化大革命などでゴタゴタする間にも、 自らの大学の紛争にも動じず、30年間漢字の生い立ちを探り続けた先生の説だ。 7、8年前、犬の散歩中に足をぐねって、骨折した。自損事故で、犬に罪はない。 1ヵ月間、ギブスと松葉杖(古いなァ)で通勤。奈良までは運転、近鉄、地下鉄に乗る。 さて、そこで質問。「1ヵ月間で、何回席を譲られたでしょうか」。正解は「1回」。 はるかなる未来の「悠」も結構だけれど、足元の「仁」は、ただ人気の人名漢字。 座布団だって、「笑点」の小道具、お寒い笑いの採点法にすぎないのかもしれない。
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