熊が、出る。(篆刻:熊)

熊
我が家には、場所柄いろんな動物が来る。裏の元の田んぼが荒れたままの時は、 葛の茂みに、野うさぎの巨大な糞があった。畑の生ゴミ捨て場では、狸に睨まれた。 去年は、家の前のぬかるみに、イノシシの足跡があった。今年はヤマモモの実を狙って、 猿のファミリーが何回も押しかけてきた。蛇は、石垣の隙間を根城にしている。 お隣では、屋根裏にムササビが定住して、夜中ガリガリと家をかじる音に悩まされた。 さすがに鹿は来ないが、熊は頻繁に現れる。それも、ちゃんと弁当を持って。 通称が熊さん。家に孫が来る土日を除いて、ほぼ毎日、朝から夕方までのご出勤。 我が家の敷地の端に小屋を建てて、作業場兼竹炭アートの展示場にしている。 炭焼きの窯もすぐ近く。笹に覆われて放置されていた村の炭焼き窯を修復した。 孟宗竹も真竹も小屋のそば。他人の山だが、切れば切るほどよろこんでくれる。 竹を切るのは寒い時がいいから、そろそろ準備シーズンになる。窯に入るほどの 長さにして、節に空気抜きの穴を開け、乾燥させて、それから炭焼きにとりかかる。 「西狭川炭焼倶楽部・熊炭」というブランド名を持つ、竹炭職人なのである。 この「熊」の印はラベル用。「能と火」で、「よく火をつかう」という意味になっている。 炭焼きを始める前から熊さんだったから、炭焼きは運命であったのかもしれない。
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