ミルキーは、道にある。(篆刻:道有)

道有
私が生まれて19歳までいた鶴見の家は、京浜第二国道の「めがね橋」に近かった。 フランク永井さんが、「夜霧の第二国道」という歌は、羽田空港に向かう車から その橋を見て着想したと話すのを、ラジオで聞いた。私にとっては、ご当地ソング。 競輪でスッテンテンになった父は、家具職人に戻った。家具といっても、木製の ショーケースやカウンター。図面をもらいに、横浜市内まで第二国道を自転車で行った。 ある夜、帰ってきた父は、大きなダンボールを抱えて、得意満面だった。 国道で拾ったのだという。家族6人、誰も交番に届けるなんていう気は、毛頭ない。 だって、そのダンボールには「ミルキー」と、くっきり鮮やかに印刷されているのだもの。 開ければ、中にはまさしくペコちゃん、ポコちゃんのミルキーの箱が、ぎっしり。 みんなで欲しいだけ頬ばって、なめて、噛んで、食べて。残りは押入れの特等席へ。 その後数日、我が家は欲しいときに欲しいだけミルキーが食べられる天国と化した。 篆刻は「道有り」。前回の「無駄」とセットで彫った、「無駄に道あり」の古い習作だが。 日本中が食べもの、甘いものに飢えていた時代の、道にミルキーありという話。 その後、ミルキーウェイは天の川だと聞いても、京浜第二国道としか思えなかった、 というのは冗談だけど。冗談ついでに「景品第二国道」・・・
ページ上部へ