謙虚に、受けていただいた。(篆刻:虚受)

虚受
車の事故というのは、大きくても小さくても、当てても当てられても、実に後味が悪い。 が、きのうは、そう言い方は不謹慎に決まっているけれど、むしろ爽やかだった。 11月にカミサンも還暦を迎えたので、母の見舞いを兼ねて1泊旅行をした。 空港からレンタカーで1日目は快調。2日目のきのうは、ある名刹を訪ねようとした。 駐車場に入るために、少しバックしたら、ゴンと鈍い音。後ろには大きな車がいた。 こちらはフィット、あちらはパジェロ。フィットは後ろドアがへこみ、バンパーもずれた。 降りてきたのは、そのお寺の若いお坊さん。バンパーが少し傷付いただけだから 構わないとおっしゃるが、警察の検証がないと保険が効かないので、パトカーを待った。 昼前でもあったから、「この近所に、生ガキのおいしい店はありませんか」と尋ねると、 横からカミサンが「お坊さんに、そんなことお聞きするなんて」と、気をつかう。 お坊さんは「このあたりは、どこもおいしいですよ」と、門前へ気配りのお答えに続いて、 「肉でも魚でも、お布施であれば、何でもありがたくいただきます」とのこと。 篆刻は「虚受(きょじゅ)」。何事も謙虚に受け入れるべし、という意味ではあるけれど、 私の車まで受け入れてもらったのには、大いに恐縮するばかり。お寺には大事に ならなかったお礼参りをして、その後すぐ、生ガキをしっかりお腹に受け入れたのだった。
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