気の中に、神あり。(篆刻:気中神)

気中神
白川静先生の京都でのお別れの会には、記帳だけでもさせて欲しかったが、 その12月7日は、すでに旅行と決まっていて、日程を変えることができなかった。 8日の夜帰ると、一通のはがきがあった。平凡社の白川編集部の方からだった。 『篆からの、贈りもの。』の本を先生にお渡しできなくなったので、せめて平凡社の 『字統』ご担当の方に、とお送りした。それへの、ご丁重な返事だった。 「白川先生のご自宅にお参りに伺う機会がございまして、ご霊前にお供え いただくよう、ご遺族にお預けいたしました」という、まことにありがたいお言葉。 続いて「私どもには、先生のお原稿でこれから本にするものもございます」とある。 まだまだ本になっていない原稿があることに驚いた。先生がはじめて一般書として 『漢字』を書いたのは、昭和45年、60歳。いまの私の年齢だったという。 86歳のときに完成した『字統』『字訓』『字通』の3部作は、実に4000ページ超。 文芸春秋に宮城谷昌光氏が「百歳をこえぬうちに逝去することはあるまいと、 私は安心していた」「博士が堅持している活力が尋常ではないことを知っていた からである」と書かれている。篆刻は「気中神」。ずっと前の「心中仏」との対だが、 まさに白川先生は気の中に神を宿していたのではないか。そうとしか思えない。
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