気力の、出どころ。(篆刻:気力)

気力
戸川幸夫の『高安犬物語』から、もうひとつ『土佐犬物語』という話。 土佐犬は、闘争精神の旺盛な土佐在来の日本犬に、セントバーナードなど 体力と忍耐力のある洋犬を交配したものという。剣道の道場主に育てられたキチは、 父母が横綱で申し分ない血統なのに、体が小さくて、気後れして唸るという 致命的な欠陥があった。道場主は、稽古着に着替え、日本刀を持って庭に下りる。 「キチ、俺の気合を受け取れ、分からなければ・・・・・・斬るぞ」 それを境に闘犬となったキチは、横綱になり死ぬまで闘った。盲目になっても。 ・・・という話から、いきなり私の剣道の話。30を過ぎて剣道を始めたくせに、 基本の素振りさえちゃんとやらなかったから、初段の試験でつまずいた。 2回落ちて、やっと一念発起。禁煙し、ランニングをし、試験場にも早く着いた。 道着に着替えて、会場におりると、窓から陽が差し込んで美しかった。 実技の相手に竹刀を構える。相手の面の中で、目がつり上っているのが見えた。 すっと間合いを詰めて、竹刀を振り下ろしたら、「ポーン」と面が決まった。 以来、私は、気力は自信から生まれると知ったのだが。篆刻は「気力」。 このふたつの話、落差があまりに大きすぎて、話をまとめる自信も気力もない。
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