無は、ゼロじゃない。(篆刻:無)

無
正月のNHK教育テレビだったと思うのだが、見ず知らず同士が生き方、考え方を 語り合う「一期一会」という、真面目な番組。東京で旅行プランナーを目指して バイトしながら専門学校に通う20歳の男性が、福岡で18歳無職の女性と会う。 その彼女が万年床で起きるのは午後2時ごろ。夕方から出かけて、食事やカラオケは 友達のおごり。母子家庭らしく、母親は「少し甘やかせ過ぎですかネ」というばかり。 その彼女の言い分はこうだ。「理想を目指して頑張っても、きっと挫折するから、 努力なんかしない」、「無理して何かしても続かないから、何もしない」等など。 本人はちゃんとした理由を言っているつもりなのだろうが、ただの屁理屈。 「義務教育だから、給食費は払えるけれど払わない」とおっしゃる親も、同類同属。 それやこれやで、中学の英語の教本にあった、こんな話を思い出した。 「新しい家政婦が掃除をしない。理由を聞くと『掃除したって、また汚れるから』。 主人は言った。『ならば、私もあなたに食事はあげない。またお腹が空くから』と。」 篆刻は、「無」。巫女(みこ)が飾りのある両袖をひるがえして舞う形。舞いながら 無我の境になるからか、元来有無の意味は無い。屁理屈並べて、何もしないのは 無ではなく、ゼロ。いやマイナス。人一倍横着で理屈っぽい私が言うのも恐縮ですが。
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