新しいのに、懐かしい。(篆刻:新懐)

新・懐
正月明けの仕事が一段落したので、デスク周りを片付けたら、昔の大丸神戸店の 企画書が出てきた。コンセプトは「新しいのに、懐かしい」。いまだに健在らしい。 レトロな面影が残る旧居留地と、神戸ファッションに代表される斬新の対比の中に、 神戸大丸らしさがあると考えてのこと。「Aか、Bか」という二者択一ではなく、 「AなのにB」、「AだけどB」という曖昧、混沌の中に真実がある、と思って書いた。 それは「オクシモロン」と呼ばれて、「公然の秘密」「ゆっくり急げ」のように、 対立する語句から新しく深い意味を探求する「撞着(矛盾)語法」だと、最近知った。 江崎玲於奈さんは、「組織化された混沌」を研究体制の理想形とおっしゃる。 部分としては自由奔放に、全体としてはバランスと秩序を、というオクシモロン。 私の勝手な「だけど理論」は、ノーベル賞受賞者と同レベルだったのだ。 さて、篆刻は「新と懐」。新は、神事のために斧で伐る新しい木に辛(針)を打つこと。 懐は、死者の襟元に涙(目と水)をそそぎ、哀惜する心。語源からしても、 めでたさと悲しみの間に真実はあるようだ。ということで、このブログ100回目が、 まことにアカデミックになったのは、よろこばしい限り。ではあるのだけれど、 「嫌よ、嫌よも、好きのうち」もオクシモロンだと気づいて、とたんに下世話になった。
ページ上部へ